右から左へ、大きい順に並べました。
右の大きなへべすは、長男です。 一番左は、まだ幼い5男です。
長男は60mm以上ありますが、5男は30mmほどです。
切って、中身を見てみると。
びっくりです。
種が多い。
ちなみにこのなかで現在(8月中旬)出荷に適したサイズは、3男(真ん中)あたりです。
しかし見てください。
4男と5男の種の少なさを。
そもそもなぜ、本来種無しのへべすの実に種が入るのでしょうか。
大事な言葉にはアンダーラインを引いときます。
それは、へべすの花が咲く4月下旬頃の話になります。
へべす畑に花が咲き始めるとやって来るのは、主の私だけではありません。
ミツバチや
ハナムグリと呼ばれるこんな虫も、へべすの花の蜜が大好きです。
写真:農業環境技術研究所
名前のとおり、花にもぐって蜜を吸います。そのときへべすの小さな小さなへべすの実を傷つけたりします。
これらの昆虫は、訪花昆虫と呼ばれていて花の咲くところにどこでも現れます。
この訪花昆虫がへべすの蜜を吸いに来ることで、へべすの実に種が入ってしまうのです。
この訪花昆虫たちはへべすの花だけじゃなく、甘夏など他の柑橘類の花にも蜜を吸いに行っているからです。
こうして他の柑橘類の花粉とへべすが受粉してしまい、種が入るのです。
ではどうして、4男5男には種が少ないのでしょうか。
長男が花を咲かせた時はまだ満開率が2~3割程度のため、昆虫が我先にと殺到しほぼ100%の確率で花の蜜を吸われます。
しかし4男の花が咲くころは、ほぼすべての蕾が満開となるため、蜜を吸われる確率がぐっと下がるのです。
こんな質問がたまに来ます。
「出荷初めのころにへべすを購入したことがあるけど、種が少なかったよ」と。
はい。
良い質問ですね。
かくゆう私も新規就農したての頃は、出荷初期のころでも種が少なかったです。
種の量や訪花昆虫による実の傷をいかに少なくさせるかに情熱を傾けていました。
そう、種の量はある程度コントロールできるのです。
農薬という人間の考え出した英知によって。
ぶどうのように種無しにするためのホルモン剤を使うわけではありません。
何をするか。
それは、種が入る原因となる昆虫を花の咲く時期だけ皆殺しにするのです。
まず花が少し咲いたころに殺虫剤を散布します。
昆虫に直接散布しなくても花に毒素が残っているので、散布後でも一定期間効き目が持続します。
そして2回目の散布は満開のころです。
徹底して昆虫退治をしたい人は、散り始めのころにも散布します。
こうして、出荷初めのころでも種が少ないへべすが出来上がるのです。
凄いでしょ。
農家にとって訪花昆虫は、侵略者つまりロシア軍にしか見えなくなるのです。
ここで、農家の名誉のために言っておきますが、別に農家も好きで殺虫剤をかけているわけではありません。
農薬を高いお金で買って、殺虫剤まみれになりたい人なんていません。
風向きひとつで、目や口から農薬が入り込みます。
出荷先である市場からの要望、つまり消費者がそういう農産物を求めいているんだと教え込まれます。洗脳という言葉よぎります。
見た目が悪い野菜は、市場から弾かれます。
市場に出荷できない➡廃棄➡収入無し➡離農➡離婚➡日雇い労働➡アルコール依存症➡引きこもり➡生活保護➡?
何がSDGsでしょうか。
偉そうに未来を語る前に、現在のしくみや考え方を見つめなおすべき政策を提案してほしいものです。
愚痴りだすと止まらないので、やめときます。
熊野農園のへべすの種の話に戻します
熊野農園のへべすは、種が多い!
それは、訪花昆虫を殺すための殺虫剤は散布しませんから!
熊野農園のへべすは農薬を出来る限り減らした栽培方法なので、種が多く入ってしまうのです。
なので、種が少ないへべすを希望されるかたは、9月に入ってからご注文ください。
へべすの4男5男をお届けします。
そして、何より果皮が薄いので搾りやすく果汁もたっぷりです。
それが、へべすの旬が9月という理由です。